おはようございます、おにぎり成です。
それはある日の昼下がり。突然の悲劇に襲われました。(少し長いお話です)
仕事中、私は用事があって普段は使われていない事務所に足を運んだ。誰もいない事務所なので、防犯システムと二重鍵で厳重に施錠されている。
激しい雨の中、事務所に入るために鍵を開けようと急いで裏口にある扉に近付く。そのとき、防犯システムを解除しようと伸びた手がピタリと止まった。「奴」だ。
カエルが鍵穴と防犯システム付近に門番のごとく張り付いている。私はNARUTOに出てくる忍のように正面を向いたままシュバッと後ろに飛び下がった。
私の世界で頂点に君臨する苦手王者「カエル」見るだけで腹の底から恐怖を感じる。
子供の頃、兄の友人に服の中にカエルを入れられたことが理由でカエルが大の苦手になってしまった。当時住んでいた家が田んぼに囲まれていたことから、少しでも窓を開けっぱなしすると家の中にカエルが侵入してきたり、兄と喧嘩したときに兄からカエルを投げ付けられたり、それに味を占めた兄にチョコエッグに入っていたカエルの模型で驚かされたり、私とカエルの因縁は深い。
…こうして文章にするとカエルではなく兄との因縁が深いような気がしてきたが、とにかく私はカエルが苦手だ。
ちなみに夢でうなされているときは大体カエルが夢に出てきている。巨大なカエルに睨まれたり、大量のカエルが押入から出てきたり、カエルが肩に止まっていたり、そんな夢をみている。
「カエルだ」「逃げたい」「どうしよう」「事務所に入れない」「用事があるのに」「鍵を開けなければ」たくさんの言葉が脳内を渦巻く。私は周囲を見渡して現状を打破できる術はないか、少ない脳みそをフル回転させて考えた。
ふと横をみると、以前会社のイベントで使用していた壊れた旗の棒が転がっていた。その棒だけでは短いので、他にも転がっている棒と組み合わせて2mほどの棒を作り上げた。
「この棒でカエルをつつく」私は意を決して棒の先をカエルに向けた。棒はそこそこ重くて持つ腕が震えたが、ぐっと力を込めてカエルを傷付けないようにそーっと棒を当てる。
おかしい。確かに棒は当たっているはずなのに、カエルは微動だにしない。今度は少し強くカエルをつついたが、カエルは「お邪魔で?」というように少しだけ横に歩いた。
それでは困る。もう一度つついたが、カエルは鍵穴と防犯システム周辺から退こうとしない。
私は職場の仲が良い子に電話をかけた。話を聞いてほしかったのだ。一連の流れを説明すると、近くに肥満気味の同僚がいることを知ったので「こちらの事務所に来る用事はないか」と聞くと「僕はカエルよりうさぎのほうが怖いです」と意味のわからない返答をされた。要は自力で何とかしろということだ。
次はこちらの事務所に来る用事があると言っていたよく泣く先輩に電話をかけた。先輩は「急用が入って事務所には行かないけど、どうした?」と言った。私は一連の流れを説明すると、先輩は申し訳なさそうに「何もできなくてごめんね…」と謝ってきた。先輩は優しいのだ。「忙しいところすみませんでした」と、こちらも謝って電話を切った。
もう誰も頼れない。
私は棒を強く握り締めた。やるしかない。
つつくたび動くカエルに恐怖しながら、何度も棒をカエルに当てたが一向に退く気配をみせない。すると次の瞬間、カエルがのそりとこちらに向き直ってきた。その瞳は真っ直ぐ私を捕らえて離さない。「次やったら、飛ぶぞ?」カエルの瞳はそう訴えていた。
私はゆっくりと棒を地面に置いた。さすがの私もカエルにメンチ切られたのは初めてだ。完全に心が折れた。
約30分の格闘の末、私はカエルに敗北した。「もう、いい…」そう呟いて事務所に背を向けて歩き出す。乗り込んだ車内で「カエルに負けました」と先輩にラインをしてから車を走らせた。
こうして私とカエルの因縁はさらに深まった。
そして昨日。犬の散歩行こうとすると、カエルが犬小屋に張り付いていた。私はカエルを血走った目で睨み付けてから犬と歩き出した。
こんなど田舎でカエルが苦手なのは生きづらい。本当はカエルと仲良くしたい。
ではまた。