米粒のような独り言

アラサーオタク女性の独り言です。文章とお絵描きが好きです。おにぎりボウズくんというオリジナルキャラクターを描いて楽しんでいます。※無断転載などご遠慮ください。

記憶の波に埋もれないように

お題「人生で一番古い記憶」


畳の上にゴロンと寝転んで、深く息を吸う。
大の字になって天井を見ると、太陽に反射する埃がキラキラと光って綺麗だった。手を上げて掴もうとしても、埃が手のひらに収まっているのか、それとも畳の上に落ちているのか、よくわからない。
小さく揺れ動く光は妖精みたいだった。この光がほしい、それでも手に入らない。その動作を何度も繰り返していると、母の呼ぶ声がして、私は立ち上がって階段を降りていった。
それが最も古い記憶だ。


私の自我が芽生えたとき、私たち家族は父の仕事の都合で交番に隣接する2階建ての借家に住んでいた。民家に囲まれた田舎の小さな交番だった。穏やかで安らかな日常。いま思い返しても私はあの借家が好きだったと感じる。
借家には下屋があり、そこに下りて日光浴をすることもあった。父が外に出ているとき、水が降ってきたので「雨か…」と思って空を見上げると、我が兄が下屋から立ちションをしていたらしい。そんなほのぼのエピソードもある。


毎日変わらない日々を過ごしていたが、ある日私は交番のトイレに閉じ込められた。閉じ込められたというと不穏な空気が漂うが、それには語弊がある。
幼い私はトイレにカギを閉めるという行動を生まれて初めて行ったので、カギの開け方がわからなくて半狂乱になってしまったのだ。
「ウアアアアアア!!!!!」と泣き叫びながら、ドンドンドン!!と勢いよくトイレのドアを叩くと、その奇行を聞き付けた近所の人達が大勢集まってきて「成ちゃん!トイレのカギを開けるの!」「落ち着いて!落ち着いて!」と泣き叫ぶ私を助けてくれようとした。
そのおかげで「おにぎりなるは といれのかぎをあけるを おぼえた!▽」


隣の家の大村のおばさん、同い年のしんちゃん。山奥に建つ一軒家に住む、まいちゃん。
近所の人達があたたかくて優しくて、私はあの場所でのびのびと健やかに暮らしていた。


子供の頃の記憶というものは断片的で霧に包まれているように曖昧だ。良い記憶より悪い記憶のほうが色濃く残る。
記憶の整理がしたい、だから私は文章にすることにした。この日記は本にしたらわずか2ページにも満たない短い手記だが、大切な記憶を書き残しているつもりだ。読んでくれる方には感謝しかない。
ではまた。

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