こんばんは、おにぎり成です。
こんな風にずっと寝たいです。
この2日間、私が休んでいた間に何が起きたのだろうか。
いつも通りの朝、普段は無音の事務所内に異様なほど爽やかなフォークソングが流れていた。最初は誰かの聴いている歌がイヤホンから音漏れしているのかと思ったが、どうやら歌は玄関付近から流れているらしい。
私は怪訝な顔をしながら歌の聴こえる方向に歩いていった。ささやかな音量で流れるその歌は、近づくにつれて徐々に輪郭をあらわす。
視線の先には小さなCDプレイヤーが置いてある。そこから流れる歌は半年前に社長と社長夫人がプロの方に作曲してもらったという社歌ではないか。ちなみに作詞は社長夫人である。
イベントやCMなどで流す予定の社歌は、コロナ禍ということで使用することもなく、いつの間にか遠く彼方に消えたはずだった。
はっきり言ってかなり微妙な社歌なので、社員全員が失笑しながら何とも言えない気持ちになって、朝礼で流されたその社歌を呆れ顔で黙って聴いていたのだ。
場違いに流れる軽快なメロディーが、全員が俯く事務所内に切なく響き渡ったことをよく覚えている。喜んでいたのは社長と社長夫人だけだが、そんなことは誰も言わない。言えるはずがない。
そんな社員全員から笑顔を奪った社歌が、朝っぱらからお経のように延々と流れている。その光景は驚きを通り越してもはや恐怖である。
職場の仲が良い子が言うには、2日前に普段は事務所に来ない社長夫人が颯爽と現れて、CDプレイヤーを置いて歌を流して帰っていったらしい。
なぜあの人は余計なことばかりするのだろうか。自己満足の塊のような社長夫人に沸々と怒りを募らせたあと、波が引いていくように怒りが消えて、諦念という感情だけが虚空のような心に残った。
皆様にはおわかりいただけるだろうか。2分ほどの寒々しい歌詞の歌が、リピート再生でエンドレスに流れるこの苦痛が。
曲の途中に流れる「ハッピー♪ハッピー♪ハッピー♪」に吐き気を催すほどの殺意を覚える。これは拷問なのか?歴史を振り返ればこういう拷問、絶対あると思う。
「頭がおかしくなりそう」「精神イカれそう」「夢に出てきそう」全員が口々に不満を訴えるが、誰もそのスイッチを切ろうとはしない。事なかれ主義の集まりであるこの会社には上に歯向かう人間など存在しない。
私は上司に「同じ曲ばかり流れていると頭がおかしくなりそうだからラジオをかけてもいいか」と聞くと「…歌はもう流れているから各々で流そう」と意味のわからないことを言われた。つまりイヤホンでも付けて勝手に聴けということだ。
私は無感情になりながら、昼休みに楽天でワイヤレスイヤホンを購入した。
イヤホンが届くまではこの呪いの歌を聴き続けなければいけない。夕方になるとストレスから頭が痛くなった。
玄関からは「スマイル♪スマイル♪」と神経を逆撫でするようなハッピーメロディーが聴こえてくる。誰かそのCDプレイヤーを叩き割ってくれ。
今日1日ポジティブな歌をたくさん聴いたので、潜在意識にびっしりとこびりついたような気がする。これで私も明るく元気なハッピー人間になれるような気がする。
はあ、仕事辞めたい。