こんばんは、おにぎり成です。
長期休暇最後の日なので今日は好きなものを語ります。長いです。
2019年9月。夏の暑さが残る頃「そうだ、ひとり旅に行こう」と思い立ち、一泊2日で江の島の旅に出かけることにした。
新幹線から電車に乗り換えて片道2時間半。小旅行ではあるが、出不精の私にとっては思い切った旅行であった。
旅行のお供には小説が欠かせない。
そのときのお供が平山夢明作「ダイナー」だった。その年、ダイナーは蜷川実花監督によって実写映画化されていた。主演が藤原竜也さんということで「観に行きたいなあ」と思っていたが、その頃から映画観る観る詐欺常習犯だった私は、結局ダイナーも観に行くことはなかった。
そんなわけでDVDを購入することにした私は、DVD発売前に原作を楽しんでから映画を堪能することに決めたのだ。
凄まじい速さで景色が変わる新幹線の中で、心地よいリズムで進んでいく電車の中で、夢中になってダイナーを読み進めた。そしてその日、ゲストハウスで過ごした夜にダイナーを読了したのであった。
正直に言うと、江の島という美しい島の記憶が全くない。観光しているとき、カップルに「ひとりw」と小馬鹿にされたことと、平日に行ったからか、江の島にある全ての居酒屋が定休日だったことしか記憶にない。
つまり私の江の島旅行は、ダイナーという吐き気を催すほど刺激的な物語によって、見事に覆い尽くされてしまったわけだ。もう私の中で「あのときの江の島旅行=ダイナー」なのだ。
それからしばらくしても、ダイナーの読後感が私の心を完全に支配していた。その頃にはすでにダイナーIIがWeb連載されていたので、もちろんそちらも楽しんだ。不定期連載なので現在は更新が完全に止まっている。お願いだから動いてくれ。
そんな感じでダイナー熱が冷めやらぬまま、映画ダイナーのDVDが届いた。私は瞳をギラつかせて鼻息を荒くしながら、興奮する身体を押さえ付けて、ようやく映画を観ることができた。
映画は原作ほど過激なシーンはなく、ポップに美しく話が進んでいった。インスタで蜷川実花さんが「映画ダイナーを全年齢向けに制作するように依頼を受けた」ということを書かれていた。なるほどそうだったのかと思った。
感想として酷評も多かったが、私にとっては大事な映画になった。最初は若すぎる主人公のオオバカナコに戸惑ったが、玉城ティナさん演じるオオバカナコの心情が、真っ直ぐ綺麗に突き刺さった。
「誰のことも信じられなかった。そうしないと生きていけなかった。誰のことも信じなくなったら、誰も私のことを信じなくなった。そしたら自分のことも信じられなくなって、気が付いたら私の居場所はこの世界のどこにもなくなっていた。なにからも逃げられない場所である男に出会い、初めてきちんと自分と向き合った。そこから全てが始まった。少しずつ自分を信じることができるようになってやっとわかった。ずっと探していた自分の居場所は自分でしか作ることができないということ」
これは美しい色彩の町で語られた言葉だ。モノクロだったオオバカナコの世界が、ボンベロと出会って少しずつ優しい色に世界を変えていく。
人は他者に興味を持たれないと自分のことを見失ってしまう。自分のことがわからなくなってしまう。そんな経験をした人であれば、この言葉の本質がしっかりと心に届くのではないだろうか。私はそう思う。ちなみに映画は数え切れないほど何回も繰り返し観た。語ると長いのでもうやめておく。
原作と映画と漫画、ダイナーの全てが好きだ。漫画を語っていないが、漫画は一言でいうとボンベロかっこいい。決してめんどくさくなってはいない。
私がなにを書きたいのかというと、Web連載されているダイナーIIの更新を再開してほしいということだ。最終更新2019年6月だぞ。待っているファンもいるんだぞ。オタクはしつこい生き物なのだ。永遠に待っているからな。
そんなわけでダイナーの思い出を書かせてもらった。長々と申し訳ない。平山夢明さんの小説は「真剣に読んでいたのになんだこの話」という短編集や「ちょっと本当に気分が悪い」という小説が結構あるが、ダイナーは読みやすいのでおすすめだ。
明日から仕事なのでもう寝ます。
ではまた。