こんばんは、おにぎり成です。
突然ですがタイムカプセルが届きました。
それは昨日のことだ。
仕事から帰宅すると、テーブルに子供が描いた絵と手紙らしき紙が散らばっていた。
「なにこれ?こうすけくん(隣の家の子供)が遊びにきたの?」と父に聞くと「よく見てみれば」と急かされたので「子供の絵って感じw」と若干小馬鹿にしながら手に取ると、絵にはヨレヨレの頼りない字で私の名前が書かれていた。
他にも、古くなって日焼けしたテスト用紙と、兄が書いた手紙と、母の字で書かれた手紙がそこにはあった。
意味がわからなくて思考停止している私に「タイムカプセルだって。お母さんが20年前に地区の行事で出していたらしい」と父が言った。
20年前ということは、8歳の私が描いた絵ということだ。
紙には「問題の答えがわからない私」と「答えがわかってご機嫌の私」が描いてあって、その上には「テストで百点がとりたいです」という切実な願いが書かれている。百点の漢字が間違っている。君に百点は取れんよ。
そう思って2枚のテスト用紙を見ると、どちらも「100点」と書いてあった。紛れもなく私のテストだった。意外だな…。
母の手紙には家族の近況が書かれている。
父が昇任試験のため東京に出掛けていること。母の仕事と趣味のこと。兄と私が好きなこと。飼っている動物の名前。
ちなみに「プル2」とは「プル」というハムスターの次に飼ったハムスターの名前だ。プル2号という意味である。子供とは実に安直で残酷な生き物だ。
そして私の名前の横には「学校で一輪車をして まきちゃんるりちゃんお姉ちゃんと遊んだ。転んで宙を飛んだそうです」と書いてある。しかし、まきちゃんるりちゃんお姉ちゃんが誰のことだか、さっぱりわからない。宙を飛んだ覚えもない。
兄が「○○くんとジャングルジムでおにごっこ」をしているときに、私は転んで宙を飛んでいたらしい。○○くんの名前はうさぎの置物で隠した。兄の友達なのでね。
遊戯王カードは兄の宝物で、ブロックシールは私の宝物だったらしい。なんとなく見覚えのあるブロックシールは歳月を重ねて、またしても私の宝物になった。
そして亡き母よ、宝物と追伸の漢字が間違えているぞ。追信って。ある意味、幸せな生活を信じていたのかもしれないが。漢字を間違える似た者親子ではないか。
久しぶりにみた、母のまるっこくて癖のある字。適当に足早に書くから、いつも雑にみえる。
今ある幸せが当たり前に続くと思っている母。10年後に父と離婚して、その数年後にすい臓がんでこの世を去るなんて、夢にも思っていない母。
こんなにも平穏な日常を綴った手紙を読んでしまうと、これまで母に抱いていた憎しみが、本当は夢だったのではないかと思えてくる。
いつから間違えたのだろう。どうしたらよかったのだろう。そんな思いに囚われて、タイムカプセルを素直に喜ぶことができない。
だけど、ただひとつ確かに思ったことは、もしも私に子供ができたら、同じようにタイムカプセルをやりたい。
「なんでそんなことを書いたのだ」と思うほど、ばかばかしくて、でも幸せで。そんな平凡でたわいもない言葉を子供に残したい。母がそうしてくれたように。
ついでに、兄の手紙には「二十年ご ぼくはしんちょうが156cm(20年ごまでに)のびたいぜ」と書いてあった。
心配しなくても目標とする身長よりプラス20cmは伸びているぞ。立派なゴリラに成長しているぞ。
そんなタイムカプセルの話だ。
ではまた。